東京都北区西ケ原の飛鳥山公園内に、渋沢栄一の生涯と業績関する展示がある、渋沢史料館に行ってきました。


展示物のうえにある数字は、栄一の年齢を表しています。
この写真だと、 栄一 66歳で、大日本麦酒の取締役になりました。

大蔵省を辞してから、民間人としてほぼ毎年、なにかの何かの企業や社会活動に関わり、 約600の教育機関・社会公共事業の支援並びに民間外交に尽力したそうです。

わが三重県の企業にも関わりがあることを知り、身近な存在になりました。

公益と私益

経済活動は、社会の繁栄をもたらす反面、マイナイのインパクトもたらします。
栄一は、 実業に関わりだしたころから、「経済と道徳の両立」をここがけていたようです。
最初に起業した 「第一国立銀行(現・みずほ銀行)」も、銀行は「世の中に生まれるさまざまな企業の資金調達をするためのもの」と位置づけ、他の財閥系の銀行とは大きく考えかたが違ったようです。

経済活動を営むうえで、現代でも通じるキーワードを残しています。

道徳経済合一

栄一研究家のおひとり、 杉山先生によると

経済活動において、公益の追求を尊重する「道徳」と、生産殖利である「経済」、すなわち仁義道徳と生産殖利とは元来ともに進むべきもの、ともに重視すべきものであり、どちらかが欠けてはいけないという考え方です。
 簡略にいえば、事業をする上で、常に社会貢献や多くの人の幸せの実現といった公益を追求しながら、同時に利益を上げていくという理念です。
 道徳と経済は、彼の言葉からすれば、あくまで並行すべきもの、イコールで結ばれるべき関係性で、どちらかが先になる、どちらかが優先されるものではないということのようです。

國學院大學 経済学部准教授
杉山 里枝 氏 

幼いころから「論語」に触れていた栄一にとって、道徳と経済の一致を当然のことであったようです。

忠恕  ちゅうじょ

中国の儒教における二つの徳目。忠は良心ともいうべき内的な誠実心、恕は「心の如し」で誠実心に基づいて他人を思いやる徳、をいう。

Weblio辞書

栄一は、関わっていた東京養育院で、この忠恕について「なにごとに対しても、真心を尽くし思いやりをもたなければならない」と、養育院で暮らす子どもたちにと説いていました。

合本主義

「 資本主義の父」と いわれていますが、栄一は「資本主義」という言葉は、使わなかったそうです。
この「合本主義」という言葉を、使っていました。

「公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方」

渋沢栄一記念財団 木村昌人 氏

それまでの日本の商業活動は、小さな資本で個々に営んでいただが、資本を集め大きな事業を行うことが、商工業を盛んにするのには重要と考え「合本主義」という言葉と使ってました。

また資本主義には、公益という言葉は出てこないようですが、合本主義には、 「公益を追求する」という使命や目的が根本に置かれています 。

みなでヒト、モノ、カネ、知恵を持ち寄って事業を行い、その成果をみなで分かち合い、みなで豊かになる」という道筋を考えた──これが渋沢が唱える合本主義なのです。

■『NHK100分de名著 渋沢栄一 論語と算盤』より

利益を追っても道徳がなければ駄目と考え、反面「道徳があっても利益が出て継続性がなければいけないと考えた栄一の経営方針は、 SDGsをお考えるときの指針になるのではと思います。