日本マーケティング学会が年に一度名古屋で開催するサロンに参加しました。
名古屋のサロンは今年で3回目で、1回目から参加しております。
一回目は、近畿大学の廣瀬先生による「デザインシンキング」二回目は中央大学田中先生の「ブランド論」、そして今年は、「ネスカフェアンバサダー」を仕掛けられた、実務者の元ネスレ日本で現在はファンベースカンパニーの津田さんのご講演でした。研究者と実務者の両方が加入しているのも、 この学会の魅力です。


当時日本でコーヒーは年間500億杯飲まれており、そのうち約6割は家庭内で飲まれおり残りは家庭外で飲まれいたそうです。
ネスレ日本は、ネスカフェのブランドを日本でナンバーワンブランドに成長させ、年間120億杯という圧倒的な強さを誇っていました。
そんなネスレ日本にもおおきな課題がありました。それは、オフィス市場では圧倒的の弱いという点です。カップディスペンサー型のコーヒーマシンがシェアをとっていました。

職域販売で立ちはだかる壁

オフィス市場 への切り込むマーケティング作戦として、 アンバサダーマーケティングを展開しました。それは、職域販売で立ちはだかる壁として、総務の壁がありそれを突破するのは相当エネルギーが必要です。 そこでコーヒーマシンを無料で提供して定期購入的にコーヒーを購入してもらう作戦となりました。 アンバサダーさんはいとも簡単にその壁を乗り越えさせてくれます。

コーヒーマシンの管理や注文してくれる人を、 「ネスカフェアンバサダー」 と呼びアンバサダーさんこそ、 ネスカフェ のファンであるわけです。


アンバサダー
読み:あんばさだー
大使、使節
代表、代理

「アンバサダー」の意味は?ビジネス用語としての使い方や類語も解説
Career-Picks

https://career-picks.com/business-yougo/ambassador

私たちもブランディングやマーケティングをご支援するときに、製品やサービスには機能的価値と情緒的価値があることをお伝えしますが、これらの価値に社会的価値が加わり、情緒的価値と社会的価値に共感してくれる人をファンと呼びます。スポーツチーム、アスリートやアーティストには顧客(リピーター)は存在せず、世界観や価値観に共感してくれるファンが存在するわけです。

「ネスカフェアンバサダー」 のwebサイトにこんな文章があります。

アンバサダーになるとどんないいことがあるの?

マシンをきっかけに自然とコミュニケーションが生まれ、
あなたの職場に笑顔が広がります♪

https://shop.nestle.jp/front/contents/ambassador/amb/

津田さんは、東北の震災の時に個人でも何か支援したいと、コーヒーマシンとコーヒーをもって、各地の仮設住宅団地を回ったそうです。団地の集会棟に コーヒーマシンを置きを使い方を説明し、期間をおいてマシンを設置した団地にコーヒーの補充のために訪問し様子をうかがうと、災害で地域コミニティが寸断さて、知らない人同士が急にご近所になり、コミュニケーションがなかったのが、津田さんが設置したコーヒーマシンの周りに人々が集い、自然にコミュニケーション が生まれたていたそうです。

共通価値の創造

グローバル企業であるネスレは、「国ごとの様々な課題を解決し、新しい価値を創造する」ことを掲げており、社会問題の解決がネスレを成長させてきたといえます。
ネスレの創業者アンリネスレは、母乳代替食品の不足から多くの乳児が栄養不足で亡くなっていた時代だった1867年、スイスで新しく開発した乳児用乳製品を開発したのが始まりで、 ロゴマークも巣に居る子鳥たちに親鳥が食べ物を与えている様子が描かれています。
時代は流れて1920年頃、コーヒー豆が大豊作で 価格が大暴落したため、捨てられていくコーヒー豆を見たブラジル政府がネスレ社に加工食品の開発を依頼したことから、「ネスカフェ」が生まれたそうです。

愚直に

アンバサダーマーケティングでしてきたことを披露してくださいました。
それは

少ないファンからスタート

ファンに傾聴

改善点を共に考え改善する。サービスを進化させる

進化を共に喜ぶ。ファンイベントの開催

サービスの魅了が増し、新しいファンを来る。離脱も減る。

このサイクルを、愚直に続けてきたそうです。
ファンの意見から、生まれたサービスに「コーヒーはかる君」というのがあります。これはアンバサダーさんがコーヒーを注文するとき、エクセルで計算して注文していることを聞いたチームメンバーが、簡単に計算できるツールをとwebサイトで公開することにしたり、webサイトを見るとほかにも利用する人たちからのリクエストをまとめる「注文まとめる君」や、集金の手間を省くために、「LINE PAY for ネスカフェアンバサダー 」を提供しています。

誰を笑顔にしたいのか

ファンをベースにしたマーケティング を展開するうえで大切なことをいくつかお話しくださいました。特に印象に残ったことをお伝えします。

・人が好きな人をメンバーにアサインする
ファンとのコミュニケーションが必須なマーケティングなので、人が好きであることが必須
・ビジネスセンス(商売上手)と感覚的センス(美意識・道徳心)
どちらかに偏ると成功はできない。このバランスが大切。
・良いチーム 愛
マーケティングチームがギスギスしたといったネガティブな雰囲気は、外に必ず伝わる。まず良いチームであることが大事。そして、 マーケティングチーム のメンバーが、サービスや商品の一番のファンであること。

支持され、愛され、長く売れ続けるために

津田さんとともに活動されている佐藤尚之さんの著書ファンべース~支持され、愛され、長く売れ続けるために (ちくま新書) に「商品が長く売れ続けることは企業ができる最大に社会貢献」という文章があります。
市場の縮小や、新規顧客の獲得コストが高騰しているこのごろ、永続経営のためには 、商品が長く売れ続けることが最も大切ではないでしょうか?